沢田屋菓子店
 
 市川大門の中線の三丁目の所です。
 昭和元年の建物です。玄関のガラス戸をあけますと、
土間は細かな那智の黒い石が敷き詰めてあります。厚いけやきの上がり框が磨きこまれて、いい飴色になっています。畳敷の4畳半の寄りつきの隣に洋間の応接間があります。モスグリーンのビロードのカーテン、壁紙は薄いブルー系統の花柄です。照明器具もできるだけ当時のままのものを使われています。応接間のシャンデリアは、シンプルな半球で、上に木の細工が所々に配されています。
応接セットは舶来物でグリーンのゆったりした豪華な物です。亀甲で花型のお皿や金で鶴亀の細工物があります。
ピアノは、大正十二年に購入されたもので、NISHIKAWAとありました。購入された当時は、市川では秋山喜蔵さんのお宅と、二軒だったようです。建坪が七十坪で2階が二間、したは、座敷二間と離れ、女中部屋にしていた間があります。応接間から出た廊下のつきあたりのガラス戸は、中央の桟に花柄が形取られています天井が高く、欄間は、一㎝ほどの格子細工で枠に漆が塗られています。床柱や床の間の板は、銘木で木目が花ビラのようでした。御座敷の壁に納税銀行の初代頭取、山梨県で、第一回目の県会議員の、先々代の猪八郎氏の油絵の肖像画が掛けてありました。廊下は広く、座敷の両側にあり、庭からの風がさわやかで、中庭の向こうに離れが見えます。離れの回り廊下部分の屋根は、銅がはられ、緑錆の色が若緑になっています。樋も銅が使っていたのですが、戦争で供出したそうです。
 二階の二間のふすまは、モダンな松の図柄で統一されています。床柱は、さるすべりのようで、けやきの違い戸棚です。南側の書院造りの明かり取りの桟は、細かなもので、斜めの線もあります。欄間は、竹の葉をくり抜いた柄で、細目の竹も細工された板に添えてありました。廊下の突き当りの板戸も、二十格子の模様付きです。