料亭福金楼さん
 
 市川本町駅前の南線の所です。
 福金楼の『楼』は県下の名店三つに与えられた名誉ある商号で、伝統ある料亭です。
明治二十四年の操業で、中線の唐木屋薬局の隣にあったが、昭和十一年九月身延線の市川本町駅が開設されると同時に駅前である現在地に移転しました。
L字型の二階建ての木造建築です。上がりまちは、けやきです。巾が一m五十㎝もある廊下は、杉の厚そうな板です。玄関の土間で見える帳場の部屋の障子は、雪見格子になっていて硝子の部分が、斜めの山型になっています。隣の壁の部分は釣鐘型にくりぬかれ裏にある障子の桟は、富士と雲海を手の込んだ細工で描かれています。階段の壁に電気のスイッチが並んでいます。建てられた当時のもので、アンティークな物です。一階の八畳間は、床の間との違い棚で二間あり天井が高く、広く感じられます。一間巾の広い階段は、厚い一枚板です。松、竹梅の間が南に面して一線に並び、襖を取り外せば大広間になります。鷹と牡丹の間が北側にあります。全部合わせて一五十名の収容力があります。床柱は、どれも名木が使われています。床の間は、畳になっていて、袋戸棚は金地が張られています。書院造の明かり取りは、精巧な細工の桟が幾何学的な飾りになり、重厚さを添えています。松の間と竹の間の欄間には、三枚に松竹梅が彫られています。その下に磨きこまれた板戸が四枚飴色になっています。お風呂場は、タイル張りで、床の間と、洗い場がついている変わった作りです。立上がりの部分に四枚大きめのタイルがあり、富士山が焼き付けられた凝ったものです。壁は、濃い目の水色で塗られ、天井が竹で編み込まれたもので作られています。建具の桟で籐の花や、富士と帆かけ船、三味線などが描かれています。錆びを嫌ってか敷居のレールには、ここの場所だけ木になっています。脱衣部屋にのし板が立てかけられていて、裏に明治二十年福金楼とあります。市川の旦那衆が芸妓さんをあげて遊んだ時代や、結婚の披露宴が良くなされた時代をもつ歴史ある料亭です。